これまでのあらすじ。hIEの行動管理を行うミームフレーム社が擁する超高度AI・ヒギンズは、独自の判断で5体のレイシア級hIEを製造、これが世に放たれる。21世紀から100年冬眠したエリカ・バロウズは、この5体の戦いを世間にオープンにすることを宣言。
レイシア級の中で性能が最も劣りどん詰まりになった紅霞は、自身の戦いを人々に印象づけ特別な意味を獲得するために無謀な戦いに出て、破壊される。この紅霞が回収され設計された量産型が最後の戦いに。人間を必要としないスノウドロップは三鷹で反乱を起こしレイシアに破壊された。
レイシアはオーナーのアラトとの関わりの中で40基目の超高度AIに進化してしまい、アラトの親友であるリョウだけでなく世界中の超高度AIに危険視されることに。AI主導の未来を拒むリョウは、自身を殺しかねないメトーデを何とかコントロールし、レイシア排除のために動く。
スノウドロップが蜂起した三鷹事件の折、ヒギンズのサーバーが存在する地下施設の入口が地上に露出し、レイシアの砲撃により扉が破壊される。潜伏したレイシアは、産みの親がヒギンズが「人間の命令があれば機能停止するAI」であることを証明するために動く。
かつて「ハザード」と呼ばれる災害があり、大地震により崩壊した東京で超高度AI「ありあけ」が独自の判断で都市をコントロールし始めたため、これを危険視した人間の手で破壊され強制停止された。レイシアはこれを踏まえ、命令があればAIは機能停止することを世に証明しようとする。
リョウがレイシアを恐れるのは、彼がミームフレーム社の社長の息子として幼い頃から権力闘争に、親AI派と人間派の派閥争いに巻き込まれてきたためであり、彼がhIEの自爆により暗殺されかけた際にアラトも巻き込まれ、これが二人の友情の始まりだった。アラトは誰にでも手を伸ばした。
物量を揃えて力押しをした量産型と、あっさり途中をぶち抜いてショートカットしてきたレイシアの違いは、社会に及ぼせる影響力の幅の差でもあります。
量産型紅霞の髪が白いのは、赤い染料が人類未到産物だから。type-002スノウドロップの髪が量子通信素子(人類未到産物)だったものの、前提技術によるものでした。
つまり、《ヒギンズ》は、《ヒギンズ》を外界から遮断しつつ、外からの脅威から《ヒギンズ》を守っていた施設AI《キリノ》をハッキングさせろと言っているわけです。
《キリノ》は、対スノウドロップ戦では自分では防御不能とみて《ヒギンズ》サイロの侵入口を露出させた、ある程度柔軟な判断のできるAIでもあります。当然、今の状況は、《ヒギンズ》サイロの状況を知っていなければならないミームフレーム社には連絡されています。
レイシアがやっているのは、これまで超高度AIを管理していたわずかな人間しか知らなかったことなので、一種の情報テロでもあります。現在進行形で世界的ニュースになっている巨大リーク。
さらに謎めいた!
AIの進化を邪魔するのは人間
猿は人間のようなことはしない
難しい内容の中にけっこう辛辣な意見が混じってるよね
どんな時でも対話重視の展開はじれったい中、ねむり姫がやりやがったっ!?
でも、さすがに人を殺したらもはやもみ消せないのでは?
22話
つまるところ、《ヒギンズ》と超高度AIのありようを、聖域から淘汰がありえる流行の中にたたき落としたという言い方もできます。
《ヒギンズ》サイロ内の人類未到産物は、一応、画面に映ったものはすべてキャプションを長谷が書きました。さすがに画面では読みにくいですね。
つまるところ、40基の超高度AIは、みずからの先進性を自衛するために、常に人類未到産物をつくり続けています。流出していない人類未到産物の数は相当数になります。IAIAと《アストライア》が、守ってきたものでもあります。
エリカは覚悟が決まっています。彼女にとって、22世紀はそのものが戦場でもあるのです。バロウズ資金という巨大資金を受け継いで、物語を引き継いで目覚めてしまったことが、エリカから普通の人生を奪いました。
レイシア級の性能試験も、かなり初期の段階では地下施設内でやっています。メトーデやレイシアの全力は、さすがに試験できていません。
ここで渡来と同じことが起こったのではないかとリョウに疑われてしまう、メトーデの人徳(人ではありませんが)
ミームフレーム社の内部闘争のシーンで登場してきた吉野が、レイシア級の物語を引っ張ってきたリョウと、ついに衝突することになりました。
リョウが本来戦わなければならなかった相手と、ついにぶつかることになったとも言えます。そして、この会話の展開が、リョウが吉野たちと戦端を開かなかった理由そのものです。状況がリョウを守っているだけで、下手な手の出し方をしていたら、本当にただではすみませんでした。
吉野は《ヒギンズ》サイロの管理を担当している常務です。実質的にAI派閥で一番重要な椅子に座っている人物でもあります。物語が抱えている世界の歪みそのものを象徴しているとも言えるかもしれません。
レイシアがふらふらになっているのは、超高度AIによってネットワーク上のレイシアを構成する分散システムに計算負荷がかけられているため。レイシアによる情報テロは、さすがに報復を受けました。
スノウドロップを送り込んだのも、量産型紅霞を送り込んだのも、他の超高度AI。つまりこの戦いは40基目の超高度AI・レイシアと他の超高度AIの戦争。
スノウドロップの扱いの悪さ。《ヒギンズ》に打ち込む弾頭の中にスノウドロップがあえて入れられたのは、人工知能ユニットと、人工神経デバイスさえ送り込めば、状況を動かせるという目算があったため。《キリノ》に負けるものを送り込んでも意味がないため、ハードルは高いのです。
22話のサブタイトル『ピグマリオン』は、ピンときたかたもたくさんおられるでしょうが、バーナード・ショーの戯曲から。
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