この日、μ’sやA-RISEを始めラブライブ!最終予選に進む4組のスクールアイドルの元に多くの報道陣が詰め掛けていた。
司会者「それでは最終予選に進む最後のグループを紹介しましょう。音ノ木坂学院スクールアイドルμ’sです」
司会者「この4組の中からラブライブ!に出場する1組が決まります。では1組ずつ意気込みを聞かせてもらいましょう。まずμ’sから」
穂乃果「私たちはラブライブ!で優勝することを目標にずっと頑張ってきました。ですので、私たちは絶対優勝します!」
希「ついに…ついに…ここまで来たんや!」
そして今、穂乃果の放った宣戦布告と同時に各グループは最終予選で勝ち残るべく動き出すのであった。
スクールアイドル・μ’s。
これは、スクールアイドルの祭典・ラブライブ!で優勝を掴み取るために立ち上がった9人の少女たちの物語である。
にこ「何、堂々と優勝宣言してんのよ!」
穂乃果「いやぁ勢いで…」
真姫「でも実際目指しているんだし、問題ないでしょ」
海未「確かにA-RISEも…」
一方のA-RISEもまた、最終予選は本大会に匹敵するレベルの高さと告げていた。
絵里「それじゃあ、これから最終予選で歌う曲を決めましょう。歌える曲は1曲だから慎重に決めたいところね」
にこ「私は新曲がいいと思うわ」
海未「予選は新曲のみとされていましたからその方が有利かも知れません」
花陽「でもそんな理由で歌う曲を決めるのは…」
真姫「新曲が有利ってのも本当かどうか分からないじゃない」
希「例えばやけど、このメンバーでラブソングを歌ってみたらどうやろか?」
花陽「なるほど、アイドルにおいて恋の歌即ちラブソングは必要不可欠! 定番曲の中に必ず入ってくる歌の一つなのにそれが今までμ’sには存在していなかった!」
真姫「にしても今から新曲は無理ね」
絵里「でも諦めるのはまだ早いんじゃない?」
希「そうやね、曲作りで大切なんはイメージや想像力だろうし」
海未「まあ、今までも経験したことだけを詩にしてきたわけではないですが」
穂乃果「でもラブソングって要するに恋愛でしょ? どうやってイメージを膨らませればいいの?」
つまりはこういうことである。
花陽「あ…受け取ってください!」
希「お、いい感じやん」
海未「これでイメージが膨らむんですか?」
希「そうや、こういう時とっさに出てくる言葉って結構重要よ。じゃあ次、真姫ちゃん行ってみよう!」
テイク2。
真姫「な、何で私が? はいこれ、いいから受け取りなさいよ。ベ、別にあなただけにあげたわけじゃないんだから。勘違いしないでよね!」
希「おおーっ!」
花陽「パーフェクトです。完璧です!」
凛「漫画で見たことあるにゃ!」
真姫「どう、これで満足?」
にこ「ふんっ! 何調子に乗ってるの?」
真姫「別に乗ってなんかないわよ!」
希「じゃあにこっちもやってみる?」
にこ「全くしょうがないわね!」
テイク3。
にこ「どうしてかって、分からないの? ダメ! 恥ずかしいから見ないで! もうしょうがないわね、ちょっとだけよ。髪、結んでない方が好きだって前言ってたでしょ? あげる、にこにーからスペシャルハッピーな…」
…ところがある!
希「あっ、バッテリー切れた」
穂乃果「じゃあもうちょっとだけ考えてみようか」
海未「私は別に構いませんが」
絵里「それじゃあ今度の日曜日、みんなで集まってアイデア出し合ってみない? 資料になりそうなもの私も探してみるから。希のそれでいいでしょ?」
希「そうやね」
真姫「変じゃない? 絵里があそこまで率先してラブソングに拘るなんて」
花陽「それだけラブライブ!に出たいんじゃないかな?」
真姫「だったら逆に止めるべきよ。どう考えたって今までの曲をやった方が完成度は高いんだし」
凛「希ちゃんの言葉を信じてるとか?」
その頃…
希「いくらなんでも強引すぎやない? みんな戸惑ってたみたいやし」
絵里「いいの、私がそうしたいんだから。ずっとやりたかったことなんでしょ? じゃあね」
希「全く…お節介やね…えりちは」
結局、恋愛映画からも何もヒントは編み出せなかった。
絵里「なかなか映画のようにはいかないわよね。じゃあ、もう一度みんなで言葉を出し合って…」
真姫「待って! もう諦めた方がいいんじゃない? 今から曲を作って振り付けも歌の練習もこれからなんて完成度が低くなるだけよ!」
海未「実は私も思ってました。ラブソングに頼らなくても私たちには私たちの歌がある」
にこ「相手はA-RISE。下手な不細工は通用しないわよ」
絵里「でも」
希「確かに皆の言う通りや。今までの曲で全力を注いで頑張ろう! 今見たらカードもそれがいいって」
絵里「待って希、あなた…」
希「ええんや、一番大切なのはμ’sやろ?」
穂乃果「どうかしたの?」
希「ううん、なんでもない。じゃあ今日は解散して明日から皆で練習やね」
ともかくこの日は結論が出ないままお開きとなった。
真姫「待って!」
希「真姫ちゃん」
真姫「前に私に言ったわよね、めんどくさい人間だって」
希「そうやったっけ?」
真姫「自分の方がよっぽどめんどくさいじゃない!」
絵里「気が合うわね、同意見よ」
ここは希の住む家。
彼女はここで一人で暮らしており、子供の頃から両親の都合で転校が多かった。
絵里「だから音ノ木坂に来てやっと居場所が出来たって」
希「その話はやめてよ、こんな時に話すことじゃないよ」
真姫「ちゃんと話してよ、もうここまで来たんだから」
絵里「そうよ、隠しておいてもしょうがないでしょ」
希「別に隠していたわけやないんよ、えりちが大ごとにしただけやん」
絵里「嘘、μ’s結成したときからずっと楽しみにしていたでしょ?」
希「そんなことない。ウチがちょっとした希望を持っていただけよ」
真姫「いい加減にして、いつまで経っても話が見えない! どういうこと、希!」
絵里「簡単にいうとね、夢だったのよ、希の」
希「えりち!」
絵里「ここまで来て何も教えないわけにはいかないわ」
希「言ったやろ? ウチが言ってたのは夢なんてたいそれたものじゃないって」
真姫「じゃあ何なの?」
希「なんやろうね。ただ曲がじゃなくてもいい、9人が集まって力を合わせて何かを生み出せればそれでよかったんよ。ウチにとってこの9人は奇跡だったから」
幼き頃から希は転校を繰り返していたため、友達もができず、分り合える相手もいなかった。
そんなある日、希は自分を大切にするあまりに周囲と距離を置いては他人と上手く溶け込めない上にズルができず想いが人一倍強い不器用な人間と出会う。
それが希と絵里の出会いであった。
希にとっての夢はラブソングではない。9人で曲を作りたい。
一人一人の言葉と想いを紡ぎ、全員で作り上げた曲でラブライブ!に出る。
それが希の夢であった。
希ちゃんの可愛さ、魅力たっぷりの回。えりちは優しすぎるし真姫ちゃんはMVP。やっぱりこの回大好き!
次回は心のメロディ…いよいよスノハレ!!
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